暑い夏、家族で楽しむ川遊びや海遊び。しかし、自然の水辺にはプールとは異なる危険があります。
警察庁によると、2025年7~8月だけでも全国で446件の水難が発生し、水難者は535人に上りました。さらに2024年の中学生以下の水難死者・行方不明者28人を場所別に見ると、河川が64.3%を占めています。
事故を防ぐには「泳げるから大丈夫」「浅いから安全」と考えないことが重要です。ライフジャケットや履物の選び方から、離岸流や川の増水、万一流された場合の行動まで、川・海遊びで家族を守るために知っておきたい対策を紹介します。
夏の川遊び・海遊びでは水難事故への備えが欠かせない

水難事故は、水深のある場所で泳いでいるときだけ起こるものではありません。浅瀬で転倒する、流された物を追いかける、突然の増水に巻き込まれるなど、ちょっとした出来事から命にかかわる状況へ変わることがあります。
子どもの水難死亡事故では川での事故にも注意が必要
2024年に水難で死亡・行方不明となった中学生以下28人のうち、場所別では河川が64.3%、海が17.9%、用水路が10.7%でした。
海だけでなく川への警戒が必要なのは、見た目だけでは水深や流れの強さを判断しにくいためです。穏やかな浅瀬に見えても、一歩先が急に深くなっていたり、水面下に強い流れが生じていたりします。
泳げる子どもでも自然の水辺では安心できない
「25m泳げる」といった泳力はプールでは一つの目安になりますが、それだけで川や海の安全性を判断することはできません。
川には流れや滑りやすい川底があり、海には波や潮流、離岸流があります。海上保安庁によると、離岸流は毎秒2mに達することもあり、これはオリンピックの自由形金メダリストが泳ぐ速さとほぼ同程度です。
泳力があっても自然の力には勝てない場合があることを、親子で理解しておきましょう。
水泳授業の経験と川・海で安全に遊べることは別問題
学校の水泳授業を受けているからといって、自然水域にも慣れているとは限りません。近年は学校プールの管理・運用などを背景として、水泳授業の実施方法そのものも各地で見直されています。スポーツ庁も2026年2月、学校プールの在り方を含めた持続可能な水泳授業について参考資料を公表しました。
重要なのは授業を何回受けたかではなく、プールと自然水域を別物として考えることです。水泳経験が少ない子はもちろん、泳ぎに慣れた子にも川や海特有の危険を教える必要があります。
大人も「自分は泳げる」という過信をしない
注意が必要なのは子どもだけではありません。子どもが流されたとき、助けようとした大人まで事故に巻き込まれる可能性があります。
また、疲労や睡眠不足、飲酒は安全な判断や身体能力にも影響します。日本赤十字社も、水辺での活動前には睡眠不足、飲酒、二日酔い、疲労などがないか確認するよう呼びかけています。
家族を守る立場の大人こそ「自分なら大丈夫」と過信せず、安全装備と事前確認を徹底しましょう。
川遊び・海遊びへ行く前に親子で決めたい安全ルール

事故が起きてから子どもへ指示するのではなく、出発前に「水辺で守る約束」を決めておくことが大切です。危険な状況になったときほど、子どもは冷静な判断が難しくなります。
子どもだけで水辺へ行かせず大人が必ず付き添う
川や海では、子どもだけで行動させないことを基本にします。
特に幼い子どもは、わずかな波でも足を取られることがあります。2024年7~8月にライフセーバーが活動した全国223か所の海水浴場では、12歳以下が救助件数全体の31.4%を占めました。
「浅瀬だから」と離れるのではなく、大人がすぐ対応できる距離で見守りましょう。
見守る大人を決めてスマートフォンから目を離す
複数の大人がいると、「誰かが見ているだろう」と監視が曖昧になることがあります。
そこで「今はお父さんが見る」「次の30分はお母さん」と担当者を明確にする方法が有効です。見守り中はスマートフォンの操作や読書などに集中せず、子どもの位置と状態を継続して確認します。
溺れている子どもが必ず大声で助けを求めるとは限りません。消費者庁も、子どもは声や音を出さず静かに溺れる場合があると注意喚起しています。
サンダル・浮き輪・ボールが流されても絶対に追わない
水辺へ行く前にぜひ決めておきたいのが、「物が流されても取りに行かない」というルールです。
サンダルや帽子、浮き輪、ボールなどが流れると、子どもは反射的に追いかけることがあります。しかし、物を取るために深い場所や強い流れへ入れば事故につながりかねません。消費者庁も、帽子やサンダルなどが流されても取りに行かないよう、事前に子どもと約束することを呼びかけています。
「なくしても怒らない」「物は買い直せても命は取り戻せない」と出発前に伝えておくことも重要です。
天候が悪い日は予定を変更する勇気を持つ
せっかく予定を立てたからと、悪天候でも強行するのは危険です。
川では自分たちがいる場所に雨が降っていなくても、上流の雨によって短時間で増水することがあります。海でも風や波、潮の状態は変化します。
前日だけでなく出発直前にも天気、雨雲、河川水位、波などを確認し、不安があれば中止や場所変更を選びましょう。
体調不良や飲酒後は水に入らない
寝不足や疲労がある日は、普段なら対応できる流れや波でも身体が思うように動かない可能性があります。
大人については、飲酒後に泳がないことも重要です。海上保安庁も、飲酒後の遊泳は事故につながる危険性が高いとして避けるよう呼びかけています。
水辺へ出かける日は子どもの体調だけを見るのではなく、付き添う大人自身の体調も含めて「今日は安全に遊べる状態か」を判断しましょう。
子どもの水難事故を防ぐ服装・持ち物を準備しよう

川や海では、事故を防ぐための服装選びも重要です。特に子どもは、ライフジャケット、脱げにくい履物、見つけやすい水着など、「万一流された場合」まで考えて準備しましょう。
ライフジャケットは泳力に関係なく着用する
ライフジャケットは「泳げない子のための道具」ではありません。泳げる子どもでも、突然深みに入ったり流れに足を取られたりすると、冷静に泳げなくなる可能性があります。
国土交通省では、川で遊ぶ際にはライフジャケットを着用し、子どもについては水深が膝下程度の場合でも着用することを推奨しています。
特に自然の川では、水深が一定ではありません。数歩移動しただけで腰や胸まで深くなる場所もあるため、「ここは浅いから着なくてもよい」と判断せず、入水前から着用しておくことが安全につながります。
子ども用ライフジャケットは体格と股下ベルトを確認する
子どもの成長を考えて、大きめのライフジャケットを選ぶのは避けましょう。サイズが大きすぎると、水中でライフジャケットだけが持ち上がり、身体が抜ける危険があります。
国土交通省が示す小児用救命胴衣の区分では、体重15kg未満、15kg以上40kg未満、40kg以上といった体重区分があります。製品ごとの対応体重や胸囲を確認し、現在の体格に合う物を選ぶことが基本です。
また、子ども用では股下ベルトの有無も確認しましょう。購入後は実際に着用させ、ベルトを正しく締められるかまで確認しておく必要があります。
浮き輪をライフジャケットの代わりにしない
浮き輪は水遊びを楽しむ道具であり、身体に固定して浮力を確保するライフジャケットとは役割が異なります。
川では流れによって浮き輪が身体から離れたり、複雑な流れに巻き込まれたりする可能性があります。海でも風によって沖へ流されることがあります。
「浮き輪を持っているから大丈夫」ではなく、ライフジャケットを着用したうえで浮き輪を遊具として使用する、と役割を分けて考えましょう。
履物は脱げにくく滑りにくいウォーターシューズを選ぶ
川底には石や苔があり、裸足では切り傷、サンダルでは滑りや脱落が起こることがあります。
おすすめなのは、かかとや足首まで固定でき、滑りにくい靴底を備えたウォーターシューズです。ビーチサンダルなど、足へ固定されていない履物は水流で脱げやすいため、特に川遊びには適しません。
履物が流されると、子どもが反射的に追いかける危険も生まれます。「脱げにくい物を選ぶ」という対策は、足の保護だけでなく水難事故につながる行動を減らす意味もあります。
水着は水中で見つけやすい視認性の高い色を意識する
水着のデザインを選ぶ際には、かわいさだけでなく「水中で発見しやすいか」という視点も持ってみましょう。
色は水深、水質、水底、光の条件によって見え方が変わるため、「この色なら絶対安全」と断定することはできません。赤色も水中では光の吸収によって暗く見えやすくなります。
そのため、水や水底に溶け込みにくい蛍光系などの明るくコントラストの高い色を検討する方法があります。ただし、水着の色はあくまで発見を補助する要素です。目立つ水着を着せても、大人による見守りやライフジャケットが不要になるわけではありません。
川遊びで特に注意したい水難事故の危険

川は水面が穏やかに見えても、川底の形や流れが一定ではありません。さらに上流の天候によって、自分たちがいる場所の状況まで変化します。海とは異なる川特有の危険を理解しておきましょう。
浅く見える場所にも急な深みや強い流れがある
透明度の高い川では川底まで見えるため、実際より浅く感じる場合があります。
さらに、同じ川幅でも川底の地形によって深さや流速が変わります。子どもの膝程度の場所から数歩進んだだけで急に深くなることもあるため、水面の見た目だけで安全性を判断してはいけません。
「浅いところだけで遊ばせる」だけでなく、遊ぶ範囲を大人が事前に確認し、ライフジャケットを着用させることが重要です。
川底の石や苔は滑りやすく転倒から事故につながる
川では「泳いでいて溺れる」だけでなく、歩いている途中の転倒も事故の入口になります。
濡れた石や苔は滑りやすく、転倒した瞬間に流されれば、浅い場所でも自力で立ち上がれなくなる可能性があります。また、裸足では尖った石や割れた物などで足を傷つける危険もあります。
滑りにくい履物を着用し、流れの強い場所では無理に歩かないことが基本です。
現地が晴れていても上流の雨で急に増水することがある
川遊びでは、頭上の空だけを見て天候を判断できません。
自分たちがいる場所が晴れていても、上流で大雨が降れば、その水が時間差で下流へ到達します。川の水が急に濁る、枝や葉が大量に流れてくる、水位が上がるといった変化があれば、早めに川から離れましょう。
「雨が降り始めてから帰る」のではなく、上流を含めた雨雲の動きを出発前と滞在中に確認することが重要です。
ダムの放流情報や水位の変化を事前に確認する
ダムの下流にある河川では、放流によって水位が変化する場合があります。
現地に設置された警告看板やサイレンを軽視せず、ダム管理者や自治体、河川情報なども事前に確認しましょう。サイレンが鳴ってから荷物をゆっくり片付けるのではなく、危険を知らせる情報があれば速やかに水辺から離れる判断が必要です。
中州や岩場では増水すると岸へ戻れなくなることがある
川の中州は、水量が少ないと陸地のように見えます。しかし水位が上昇すれば周囲を水に囲まれ、岸へ戻る経路を失う可能性があります。
岩場も同様に、行きは歩いて渡れた場所が帰りには渡れなくなることがあります。
川遊びでは「今ここへ行けるか」だけでなく、「水位が変わっても安全に戻れるか」を考えましょう。特に天候が不安定な日は、中州など逃げ道が限られる場所へ入らないことが安全です。
海遊びで特に注意したい水難事故の危険

海は波や潮、風によって状況が変化します。到着時に穏やかだったからといって、その状態が一日続くとは限りません。子どもと海へ行くときは、遊ぶ場所そのものを慎重に選びましょう。
ライフセーバーがいる管理された海水浴場を選ぶ
同じ海岸でも、安全管理された海水浴場と、それ以外の海岸では環境が異なります。家族で海水浴をするなら、可能な限りライフセーバーなどによる監視が行われている場所を選びましょう。
2024年7~8月にライフセーバーが活動した全国223か所の海水浴場では、救助された人のうち12歳以下が31.4%を占めています。
監視があっても事故を完全に防げるわけではありませんが、異変の発見や救助につなげやすくなります。監視区域や遊泳可能時間も確認し、その範囲内で遊ぶことが基本です。
離岸流に入ったら岸へ向かって無理に泳がない
離岸流とは、海岸から沖へ向かって流れる強い流れです。海上保安庁によると、流速が毎秒2m程度に達する場合があり、流れに逆らって岸へ戻ろうとしても思うように進めないことがあります。
巻き込まれた場合は、まず落ち着いて浮力を確保します。泳げる状況なら岸と平行方向へ移動し、離岸流から抜けてから岸を目指すことが基本です。
子どもには細かな仕組みまで覚えさせるより、「沖へ流されても慌てて泳ぎ続けず、浮いて助けを求める」といった行動を年齢に応じて伝えておきましょう。
波打ち際でも子どもから目を離さない
「水に入っていないから安全」とは限りません。波打ち際でも強い波を受ければ転倒し、引き波によって身体を持っていかれる可能性があります。
特に幼児は大人より身体が小さく、同じ波でも受ける影響が大きくなります。
砂浜で遊ばせている場合も、水際ではすぐ手を伸ばせる距離を意識しましょう。写真撮影や荷物整理をする場合には、別の大人へ見守りを明確に引き継ぎます。
波・風・潮の満ち引きによって状況は短時間で変わる
海では天気だけでなく、波、風、潮汐まで確認する必要があります。特に浮き具やビーチボールは風の影響を受けやすく、沖方向へ流される場合があります。
また、干潮時に歩けた場所が満潮に近づくにつれて水没することもあります。
海へ行く前には天気予報だけを見るのではなく、現地の波浪や風、潮汐などの情報も確認しましょう。到着後に風や波が強くなった場合には、予定時間より早く切り上げる判断も必要です。
遊泳禁止・立入禁止の場所には入らない
「人が少ないから遊びやすそう」という理由で、管理されていない場所を選ぶのは危険です。
遊泳禁止区域には、強い流れ、急な深み、高波など、見た目では判断しにくい危険が存在する場合があります。
現地の看板や旗、ライフセーバーからの指示を確認し、立入禁止・遊泳禁止となっている場所には入らないようにしましょう。
学校のプールで泳げても川や海では別の備えが必要

子どもの泳力を考えるとき、「学校で水泳を習っているから大丈夫」と考えてしまうことがあります。しかし、一定の環境が整えられたプールと自然の川・海では、泳ぐ条件が大きく異なります。
学校外の施設を利用して水泳授業を行う学校もある
近年は学校プールの老朽化や維持管理などを背景として、公営・民間プールを利用するなど水泳授業の実施方法が多様化しています。
スポーツ庁も2026年、学校プールについて共同利用、公営プール、民間プールなどを活用する選択肢を整理しています。
そのため、「小学生なら毎年学校のプールで十分泳いでいるはず」と一律に考えることはできません。家庭でも子どもが水にどの程度慣れているのか確認する必要があります。
水泳授業の回数や経験だけで子どもの泳力を判断しない
水泳授業を受けた回数と、突然の水難に対応できる能力は同じではありません。
例えば25mを泳げる子でも、足がつかない場所へ突然落ちたり、顔に波を受けたりするとパニックになる可能性があります。
「何m泳げるか」だけではなく、子どもが水を怖がっていないか、顔が水についたとき落ち着けるかなども確認し、実際の能力以上に安全だと判断しないことが大切です。
プールにはない流れ・波・深さの変化が自然水域にはある
学校のプールは基本的に水深や水質などが管理され、川のような流れや海の離岸流はありません。
一方、自然水域では足元が見えない、急に深くなる、水温が場所によって違うといったことも起こります。川では石や流木、海では波や潮流なども加わります。
そのためプールで泳げる子にもライフジャケットを着用させ、「川や海は大きなプールではない」と教えておきましょう。
水に慣れていない子どもは浅い場所から無理なく経験させる
水に慣れていない子どもを、周囲の子と同じように遊ばせる必要はありません。
まずは安全が確認された浅い場所で水に触れるなど、子どもの経験や恐怖心に合わせます。その際もライフジャケットを正しく着用し、大人が近くで見守ることが前提です。
「せっかく海まで来たから泳がせたい」と大人側の予定を優先せず、怖がっている場合には水へ入らない選択も尊重しましょう。
川や海で流された・溺れたときに覚えておきたい行動

水難事故では、危険に気づいてから数秒の行動がその後を左右することがあります。重要なのは、無理に水の力へ逆らうことではなく、呼吸を確保して救助につながる時間を作ることです。親子で遊びに行く前に、万一の場合の行動も確認しておきましょう。
流されたときは慌てて立ち上がろうとしない
川で足を取られると、反射的に川底へ足をつけて立ち上がろうとしがちです。しかし、強い流れの中で無理に立とうとすると再び転倒したり、水中の岩などに足を挟まれたりする危険があります。
ライフジャケットを正しく着用している場合は、その浮力を利用してまず顔を水面へ出し、呼吸を確保することを優先します。
子どもには難しい説明を詰め込むより、「流されたら無理に立たない」「ライフジャケットに体を任せる」など、覚えやすい言葉で繰り返し伝えておくことが大切です。
川ではライフジャケットを着けて足を下流へ向ける姿勢を取る
川で流された場合には、仰向けになり、足を下流側へ向けて水面近くまで上げる姿勢があります。足を進行方向へ向けることで、岩などの障害物に接触した際に頭部へ直接衝撃を受ける危険を減らすことにつながります。
ただし、これはライフジャケットを着用したうえで知っておきたい緊急時の対処です。「流されても対処法を知っているから大丈夫」と考えて危険な流れへ入るのではなく、事故を起こさない行動を最優先にしましょう。
離岸流では流れから横方向へ抜けることを意識する
海で沖方向へ流されると、慌てて一直線に岸へ戻りたくなります。しかし、離岸流の流速は毎秒2m程度に達することもあり、正面から流れへ逆らうと体力を急速に消耗する可能性があります。
離岸流に巻き込まれた場合は、まず浮いて呼吸を確保し、可能であれば岸と平行方向へ移動して流れの外へ抜けてから岸を目指します。
自力で抜けることが難しければ、無理に泳ぎ続けず、浮いた状態で助けを求めることを優先します。
大声を出し続けるより浮いて呼吸を確保することを優先する
水中でパニックになると、助けを呼ぼうとして何度も叫び、その際に水を飲んでしまうことがあります。
水難時にはまず鼻と口を水面へ出し、呼吸できる状態を維持することが重要です。ライフジャケットを着けている場合は浮力を利用し、できるだけ体力を温存しながら救助を待ちます。
子どもには「泳いで岸へ戻れなかったら、無理を続けず浮く」という考え方も事前に伝えておきましょう。
子どもや家族が溺れたときに助ける側がしてはいけないこと

目の前で家族が流されたら、すぐ水へ飛び込みたくなるのは自然な反応です。しかし、水難救助では助けに入った人まで溺れる「二次事故」を防ぐ必要があります。泳力だけを頼りに救助しようとせず、陸上からできることを優先します。
泳いで助けに行くと救助者まで溺れる危険がある
溺れている人は必死に浮こうとするため、近づいた人へ強くつかまることがあります。さらに川の流れや離岸流など、最初に事故を起こした原因そのものも残っています。
そのため、泳ぎに自信がある大人でも安易に水へ入るべきではありません。
特に子どもを助けようとして保護者が飛び込み、親子ともに事故へ巻き込まれる事態を防ぐため、「助ける=自分も泳いで近づく」と考えないことが重要です。
まず周囲へ助けを求めて119番・118番へ通報する
事故を発見したら、一人で解決しようとせず、周囲へ大きな声で助けを求めます。
海で事故が発生した場合には海上保安庁の「118番」、消防・救急が必要な場合には「119番」へ連絡します。通報時には場所をできるだけ正確に伝える必要があるため、海水浴場名、河川名、橋、看板など現在地を特定できる情報を確認しましょう。
複数人いるなら「あなたは通報」「あなたは監視」と役割を明確にすると、対応の重複や抜けを防ぎやすくなります。
浮き輪・ロープ・ペットボトルなど浮く物を投げ渡す
救助者が水へ入らずにできる方法として、溺れている人へ浮力のある物を届ける方法があります。
救命浮環や浮き輪があれば優先して使用し、周囲にない場合には空のペットボトルなど、浮力を得られる物を活用できることがあります。ロープを使える状況なら、陸側から引き寄せる方法もあります。
水辺へ出かける際には遊び道具だけでなく、「緊急時に浮かせる・引き寄せるために使える物があるか」という視点でも持ち物を確認しておくとよいでしょう。
救助後も元気そうだからと自己判断せず体調を確認する
水から救助された直後に会話ができていても、それだけで問題がないとは判断できません。
水を吸い込んでいる可能性があるほか、低体温や岩への衝突など、外から分かりにくい影響が残っている場合があります。
咳が続く、呼吸がおかしい、意識がぼんやりする、強い疲労感があるなど普段と異なる様子があれば、速やかに救急要請を検討してください。特に子どもは自分の症状を正確に説明できないこともあるため、救助後まで大人が状態を観察することが大切です。
川遊び・海遊びの安全対策に関するよくある質問

最後に、川・海遊びの服装やライフジャケットについて迷いやすいポイントを整理します。水辺では「普段こうしているから」ではなく、事故が起きた場合まで考えて安全性を優先しましょう。
川が膝下程度の深さならライフジャケットは不要ですか?
膝下程度の浅い川でも、子どもにはライフジャケットを着用させることをおすすめします。
川は場所によって水深や流れが異なり、遊んでいるうちに深い場所へ移動する可能性があります。国土交通省も、子どもについては膝下程度の水深で遊ぶ場合でもライフジャケットの着用を推奨しています。
浅さだけを安全の基準にせず、「川へ入るなら着用する」とルールを統一しておけば、途中で状況が変わった場合にも備えやすくなります。
子ども用ライフジャケットは大きめサイズでもよいですか?
成長を見越して大きめを選ぶことはおすすめできません。
身体に対して大きすぎるライフジャケットは、水中でずれたり身体が抜けたりして、本来の性能を十分に発揮できない可能性があります。
商品に表示された適応体重や胸囲などを確認し、現在の子どもの体格に合うサイズを選びましょう。股下ベルトがある場合は必ず正しく装着し、遊び始める前に緩みがないか大人が確認します。
クロックスやビーチサンダルで川遊びをしてもよいですか?
川遊びでは、足へしっかり固定できるウォーターシューズなどを選ぶ方が安全です。
かかとが固定されていないビーチサンダルなどは水流で脱げる可能性があり、濡れた石の上では歩きにくくなることもあります。
履物には足裏を石などから保護するだけでなく、「脱げた履物を追って危険な場所へ入る」という事故のきっかけを減らす役割もあります。購入時は脱げにくさに加え、靴底の滑りにくさも確認しましょう。
流されたサンダルや浮き輪は取りに行ってもよいですか?
取りに行かないでください。
サンダルや浮き輪が流れているということは、それを流すだけの水流や風があるとも考えられます。物を追って予定していた遊泳範囲を離れると、深みや強い流れへ近づく可能性があります。
特に子どもには、出発前に「何か流されても追いかけない」「なくしても叱らない」と伝えておきましょう。数千円の遊具や履物より、命を守ることを優先します。
子どもの水着は何色を選ぶと見つけやすいですか?
水面や水底とのコントラストが大きい、明るく視認性の高い色を検討しましょう。蛍光オレンジや蛍光ピンクなどは選択肢になります。
一方、水中では光の波長によって色の見え方が変わります。赤色は水中で吸収されやすく、水深が増すにつれて暗く見えることがあります。また、青系は水やプールの底と同化する場合があります。
ただし、どの色が見えやすいかは水深、濁り、光、水底の色などでも変わります。「この色なら必ず見つかる」と考えず、水着の視認性は見守りを補助する工夫の一つとして利用してください。
泳げる子どもなら海や川でもライフジャケットは不要ですか?
泳げる子どもにもライフジャケットを着用させましょう。
25mや50mを泳げる能力は、流れのないプールで発揮できる泳力です。川の流れや海の波、離岸流、急な深みなどに対応できることを意味するわけではありません。
特に離岸流は毎秒2m程度に達することもあります。泳力を安全装備の代わりにせず、「泳げる子にもライフジャケット」という考え方で備えることが大切です。
まとめ│川や海では「泳げるから大丈夫」と考えず命を守る備えをしよう

夏の川遊びや海遊びは、子どもにとって自然に触れられる貴重な経験です。一方、2024年に水難で死亡・行方不明となった中学生以下28人のうち、64.3%は河川で事故に遭っています。
事故を防ぐために大切なのは、自然の水辺をプールの延長として考えないことです。
川では急な深みや流れ、増水、滑りやすい川底などに注意し、海では離岸流、波、風、潮汐などを確認します。子どもには体格に合ったライフジャケットを着用させ、足元には脱げにくいウォーターシューズを選びましょう。
そして、ぜひ家族で共有してほしいのが「物を追わない」という約束です。サンダル、帽子、浮き輪、ボールなどが流されても、水へ取りに行ってはいけません。
泳力の有無にかかわらず、ライフジャケットを着る。子どもだけで水辺へ行かせない。見守る大人を明確にする。天候が悪ければ遊ぶことを諦める。流された物は追わない。
一つひとつは難しい対策ではありません。しかし、事故が起きてからでは選べない行動があります。川や海へ出かける前に家族で安全ルールを確認し、「楽しく遊んで全員で無事に帰る」ことを何より優先してくださいね!

