生前整理とは、「身の回りの物事を人生の節目までにある程度片付ける」終活の1つです。最近クローズアップされ始めた事柄ではありますが、家族や親族へできる「最後の大きな恩返し」にもなる価値の大きな作業です。
しかしある調査では、男性は30%、女性は20%ほどが「自分には生前整理は必要ない」と感じていることがわかりました。その原因は、誰もが年を取ることに関して未経験で、「自分が高齢になって整理ができていないときにどれくらい困るのかわからないことにある」といわれています。
片付け110番でも多くの生前整理のご依頼を受けてきましたが、初めての『老いる前の準備』に、「本当に必要なのか」「何をすればいいのか」悩む人がたくさんいらっしゃいました。そこで今回は、生前整理とは何か、メリットから最適な時期、具体的に何をするのかまで、すべてご紹介します。
実践していただくことで、老後を不安なく・元気に・楽しく・身軽に過ごしていただけるだけでなく、より長生きし、そして家族仲を良好に保つこともできるようになります。
1 生前整理とは
生前整理は、『自分と家族』が、『自分の老後のため』『死後、残された家族のため』に、『家財・生活空間・トラブル』を解決・整理することを指します。
2 生前整理の3つのメリット
単に荷物や面倒な手続きを少なくできるだけでなく、自分の健康寿命を伸ばし、自分の死後に家族の力になることすらできます。
- 寿命が8年以上長くなる
- 遺品整理の費用が圧倒的に安くなる
- 相続トラブルが激減する
(1)寿命が8年以上長くなる
老後でも生活しやすい住環境を整えることが、元気に長生きできることにつながります。
※健康寿命…自立して生活できる元気な期間
- グラフの赤色…要介護期間や病気・怪我で生活の質が落ちている期間
- グラフの横軸(赤色の終わりまで)…生涯を全うするまでの期間
生前整理を行った人と怠った人ととでは、病気や怪我に負けず自立した生活を送れる期間(=健康寿命)は最大8年、生涯を終えるまでの全期間(=寿命)は最大14年もの差が現れています。
多すぎる家財は『室内での転倒』や『階段・脚立からの転落』『カビやホコリによる肺炎』を引き起こし、あなたの寿命を縮めてしまいます。
生前整理するだけで10年以上も寿命がかわってくるのですから、やって損はありません。
(2)遺品整理の費用が圧倒的に安くなる
生前整理をした場合としなかった場合とでは、遺品整理にかかる費用に約2倍もの差があります。
遺品整理にかかる費用を、一軒家(4LDK)の例は次の通りです。
- 生前整理をしていた場合:15万円~25万円
- 生前整理をしていない場合:30万円~50万円
生前整理をキチッとやっておけば遺品整理の際にやるべきことが減るので、家族に負わせる負担が格段に減ります。
(3)相続トラブルが激減する
相続や死後の手続きは、親族間で争いが起きてしまう最も大きな要因です。
相続手配などを決め終えておけば、相続関係で身内間でトラブルが圧倒的に少なくなります。いざこざの芽を事前に摘めるだけでなく、残す家族に決断させる労力を強いる事も無くなるので、元気なうちに自分でケリを付けておくメリットは非常に大きいといえます。
3 生前整理でやる4つのこと
生前整理では、所有物を必要なものと不要なものとにわける『身辺整理』、不要物としてわけた家財を処分や買い取りに出して手放す『家財整理』、遺言書の作成や財産分与を決めておく『相続整理』、死後の葬式や法要の希望などを家族に残すための『没後整理』を行います。
計画的に進めていきましょう。
(1)身辺整理
身辺整理は、『必要なものと不要なものをわける作業』で、「身辺整理ができていなければ他の生前整理作業は前に進まない」といえるほど、大変な作業でありながら『最も優先順位の高い作業』です。
自分でする場合は、計画的に進められるよう、次のような進行表を活用することがオススメです。
とはいえ、長年生活を共にしてきた身の回りの所有物の分類作業は、自分の人生の棚卸し作業といえるため、体力・気力・判断力をつかいます。作業があまりにツライと感じたら、業者に手伝ってもらうこともできるの、頼むのも一つの手です。
(2)家財整理
家財整理は、『手放す家財を整理する』という作業です。整理という手段の中には「処分や買取り」が含まれます。
買い取り
- 貴金属
- 趣味で集めていた壺や掛け軸などの骨董品
- ブランドもののバッグや時計
- 古いお酒
- レコード
こういったものがあれば、高価買取の可能性が高いです。もしかしたらあるかもしれない…と感じたら買取業者さんに見てもらいましょう。「価値がわからない…」と感じたら幅広い品目を一度に見てもらえる「骨董品買取り業者」に査定してもらうことがオススメです。
処分
大切に使っていたモノでも、家族にとっては不要なモノって多いです。そういった不要なモノだと判断した場合は処分するしかありません。
細々した物は自分で自治体に出すのが一番安全で、費用も安く済みますが、次のようなものがある場合は一人で捨てられず困る可能性があります。
- 婚礼ダンスなど大型の家具
- エレクトーンなど大型楽器
- 耐火金庫など自治体が回収に対応していないもの
どうしても自分で対処しきれないと感じた時は、友人や子供に手伝ってもらうか、不用品回収業者の力を借りるなどして処分を進めるといいでしょう。
(3)相続整理
相続整理は、『自分の持ち物(私有財産)を自分の死後誰に受け継いでもらうか決める』という作業です。やっておくことで遺産の権利を巡った親族間の相続争いの危険を回避することができます。
具体的には、次のようなことを行っておく必要があります。
- 所有財産のリストアップ及び財産目録の作成
- 相続人の確定
- 戸籍謄本の取り寄せ
- 遺言書の作成(公正証明遺言書)
- 相続税対策のための必要に応じた生前贈与
- 家族信託の契約
- 生命保険の加入や切り替え
- 所有する不要な不動産の売却・換金
かなり専門的なことも多いので、すべてを自分だけで行うのは困難を極めます。
自分の死後に家族間・親族間でトラブルが起きないよう、ミスのない適切な書類作成や手続きを行うためにも、プロ(司法書士、弁護士、税理士など)に相談しながら進めていきましょう。
(4)没後整理
没後整理は『死後の葬儀やお墓、法要の希望や、各手続きについて家族が進行しやすいよう自分で決めておく』という作業です。
生前に自分で家族が困らないよう手配しておくことで、家族が様々な決断に迷うことが無くなり、自分の死後も家族にサポートすることができます。
具体的には次のことをやっておくとオススメです。
- 葬儀会社へ生前予約し葬儀費用も支払っておく
- エンディングノートに次の6つのことを書き留めておく
- 鍵、預金通帳、キャッシュカード、印鑑、有価証券など置き場所
- 公共料金、税金、保険などの支払い方法
- 日用品の置き場所
- 家事のやり方、電化製品の操作方法
- 町内会や自治会への連絡
- 家族の知らない負債
ただ、自分の死後の希望とはいえ、家族にも「こうしてあげたい」という考えがあることもあり、一方的に決めて残すことで、家族に我慢をさせてしまうこともあります。
葬儀やお墓の希望などは事前に家族と話し合っておくとよいですよ。
生前整理について一度業者に相談してみたい、見積もりを取ってみたい、という時は『たった1つのポイントを押さえるだけで良い業者が見つかる!オススメの生前整理業者4選と料金相場』でオススメの業者など詳しく解説していますので合わせてご確認ください。
4 50代から定年までに済ませるのがベスト
生前整理のベストなタイミングは、50代に入ってから定年を迎えるまでの間です。
なるべく50代前半で終えてしまうといいでしょう。
『体力・判断力・筋力・気力』が残っている自分が元気なうちに済ませてしまうのが、生前整理を成功させる秘訣です。
5 まとめ
生前整理とは、自分のため家族のため、そして今のため未来のために非常に大切です。行っておくことで、心身ともに元気に長生きでき、自分の死後も家族に負担をかけることがないよう、トラブルの芽を摘むことができます。
元気な50代前半で、定年までに生前整理(身辺整理・家財整理・相続整理・没後整理)を終えておくことで、老後を楽しく身軽に過ごせます。残していく家族へ不安や負担といった気がかりを持ち悩まされる事も無くなり、老後という新たなライフステージを謳歌することができます。
立つ鳥跡を濁さず、大切な家族への最後のプレゼントと考えて、生前整理を終え、悔いのない生き方をしましょう。この記事が、生前整理を考えているあなたの役に立てば幸いです。